映画ポスター収集の世界
すでに映画ポスターを多数お持ちの方、これから集めてみようとお考えの方、
たまたまお気に入りの映画や俳優のものを見つけて購入を考えている方、
色んな方がこのページをご覧頂いていると思います。深浅の違いはあっても
皆さん映画ポスターの世界に魅了されていることでしょう。当店で扱っている
映画ポスターは一般に「オリジナルポスター」と呼ばれているものです。
欧米を中心にたくさんの収集家がいてその売買はひとつのマーケットととして確立しています。世界中に様々な種類の映画ポスターが存在しその数は新しく作品が製作される度に増え続けていくのです。1本の映画を紹介する為にさまざまな角度からアプローチして作られるポスターは時にアーティスティックに斬新に、またあるときは思いっきりベタにと常に見る者を飽きさせません。
そんな楽しい映画ポスターですが、集めるにあたりある程度の情報を得てないと
思わぬ失敗をしてしまう事があるかもしれません。ここではそのオリジナルポスターの基本的な知識を紹介していますので、映画ポスターの収集、また当店でご購入頂く際の参考にしていただければ幸いです。
映画ポスターの種類
全ての映画ポスターが収集の対象になっている訳ではありません。もちろん物を集めるという作業は個人の興味と情熱に依るところですので、その価値も本人次第というのが本質です。但し市場価値には明確な基準があるのです。
「限定的要素」と「需要と供給のバランス」です。以下ポスターの種類を簡単に分類、説明してありますのでご参照ください。
オリジナルポスター
映画配給会社が自らの提供商品である「映画」の宣伝の為に製作するポスターです。劇場で宣伝材料として使うためにつくられています。一部は映画館以外で使われますが、どのような状況下においても販売目的には製作、使用されません。ポスターは選ばれた印刷所で指定された数量印刷されており、その版下は製作終了後発注元に戻すか壊してしまいます。この再版不可能な製造過程が「限定的要素」を生み出し、収集対象となっているのです。各国のオリジナルポスターの種類については別記致します。
リバイバルポスター/(Rと表記 (例)80年のリバイバルだとR80になります。)
初回の映画公開から何年か経った後に作品が再上映されることがあります。その時に新たに作られるポスターがリバイバルポスターです。
海外ではRE-RELEASED,REISSUED,などと呼ばれています。便宜上分けて書きましたが、これもオリジナルポスターです。ほとんどの場合初回版が最も価値があるとされていますが、リバイバル時に全く新しいデザインで製作されて人気になるものもあります。初版と柄が一緒の場合でも、ポスターに表記されているナンバーがRからはじまっていたり、RE-RELEASED,REISSUED,と書かれているので再上映版だと見分けることができます。特に明記されていないものでもコピーライトの年代が映画の初公開年より後の場合はリバイバルポスターです。
リミテッド・エディションポスター
映画会社や配給会社、ライセンスを取得している印刷会社、企業などによって特別に限られた枚数が作られています。その目的は公的に販売する為であったりファンクラブ用に作られたりと多様です。何十周年記念、いわゆるアニバーサリー版などで多く見かけます。数に限りはありますが劇場用のオリジナルポスターに比べると収集価値は低いとされています。中には非常に高値で取引されているものもありますが、金額の高低にかかわらずオリジナルポスターとは別カテゴリーとなっています。
商業用ポスター
一般に販売するため大量に作られるポスターで、劇場貼付や宣伝に使うものではありません。劇場用と同じデザインの物も多いですが、そのほとんどはサイズが違います。日本では1000円〜2000円の価格帯で百貨店や大型雑貨店などでも広く販売されています。海外では「コマーシャルポスター」または「リプリントポスター」と呼ばれており、特に収集価値のあるものとはされていません。
リプリントポスター
日本では前記の商業用ポスターを指してこう表現する事が多いですが、アメリカなどのコレクターマーケットではオリジナルではない「にせもの」的意味合いで頻繁に使われています。商業用ポスターと違ってサイズがオリジナルポスターと同じものが多く、時にマーケットの混乱の元になります。ライセンスのあるものもないものもありますが、あくまで商業用に複製された製品で、劇場等でつかわれることは一切ありません。
ビデオ・DVD・TV 用ポスター
それぞれの商材の宣伝用に作られるポスターです。販売目的ではありませんが、劇場用とは違い一般的な収集価値はないとされています。
各国のオリジナルポスター
次に各国のオリジナルポスターについてもう少し詳しく触れておきたいと思います。全ての国のものを記載することはできませんので、世界のマーケットでもっとも人気の高いUS版を中心に、ほか当店で取り扱いのある国のポスターの説明をさせて頂きます。
アメリカ
一般的にUS版と呼ばれています。映画大国アメリカだけあり、質・量・ともに豊富で世界中に最もコレクター人口の多いポスターです。日本も例外ではなく、アメリカ版を集めていらっしゃる方が圧倒的に多いようです。最も人気が高いのがONE SHEET/ワンシートと呼ばれるサイズのものです。大きさは1984年頃までは27×41インチ(約685×1040o)でほとんどがボーダー(白枠)使用、80年代中期以降は27×40インチ(約685×1015o)になっています。移行期には縦が1025o前後のものもよく見られました。サイズの変更と時を同じくしてボーダー(白枠)のない全面アートワークが主流となり、その流れは現在も続いています。
紙質も時代とともにだいぶ変化しました。1970年代まではつやのないざらっとした感触のものが主に使われています。つるつるしたり、なめらかで光沢のある紙は60年代中期以降印刷工場に導入されているので、紙質をチェックすることで製作年数を推し量ることもできるわけです。また80年中期以前のポスターは印刷後機械折にされて劇場に送られています。もし折られた状態でなければそれ以降に作られたものと言ってほぼ差し支えないでしょう。
80年代中期に見られるもうひとつの大きな変化は両面印刷の登場です。
(DOUBLE SIDE/DSと表されるのが一般的)この時期スタジオ(配給会社)はそれまであった多種多様な紙製の宣伝物の大幅縮小を始めます。と同時に見た目に今まで以上の現実性を求め、より費用の掛かる両面印刷の手法を取り入れていくことになります。昨今では大手配給会社のポスターはほとんどが両面印刷になり、その美しさと高品質はコレクターにも絶大な人気を得ています。ONE SHEETは劇場の出入り口やロビーの他周辺エリアの広告スペース、バスの停留所や駅などにも貼られます。過去には多様なサイズのポスターがありましたが、現在広く使われているのはこのONE SHEETと地下鉄構内で使用される2SHEET/ツーシート・サブウェイ(41×54インチ)、宣伝の為無料で配布される事の多いMINI SHEET/ミニシート(サイズまちまち)くらいになりました。
ちなみに今日では使われなくなったものとして、HALF SHEET,3SHEET,6SHEET,12SHEET,ほぼ使用されなくなったものとしては24SHEET,36SHEET,などがありました。またINSERT/インサートと呼ばれる14×36インチ(約355×915o)タイプのものもあり、細身の形状と厚紙材質から、劇場内のディスプレイに重宝され1980年頃までハーフシートと共にメイン宣材として使用されていました。
(アメリカ/インターナショナル)
アメリカで製作されますのでアメリカ版ですが、国内使用ではありません。アジアやヨーロッパの一部諸国に送られそれぞれの国の劇場で使われます。デザインに関しては、アメリカ国内向けのワンシートと全く別のもあれば同じものもあります。公開時期が本国アメリカとは違う場合がほとんどですので、通常のUS版に入っている日時等の情報の部分は「COMING SOON」
「THIS WINTER」のようにあいまいな表現になっています。アメリカで印刷されていますので、サイズや紙質はUS ONE SHEETと同じです。
イギリス
アメリカのスタジオと密接な関係があり、自国の映画以外にも数え切れないアメリカ映画がイギリスで作られてきました。但しポスターに関しては常に独自のものを製作しています。BRITISH QUAD/ブリティッシュ・クワッドと呼ばれるものが最も一般的で人気があります。サイズは30×40インチ(約765×1015o)、横型のポスターです。元々はQUAD CROWNと呼ばれ、現存する1980年代前期以前のものはほとんど「折れ」の状態です。このQUADには小さいサイズのMINI QUAD,12×16インチ(約310×410o)もあります。
QUADほど一般的ではないですが、DOUBLE CROWN/ダブルクラウン、20×30インチ(約510×760o)やBRITISH ONE SHEET/ブリティッシュ・ワンシート、27×40インチ(約685×1015o)もコレクタブルなポスターとして認知されています。
その他の種類としてはバス停や駅に貼られるBRITISH BUS STOP POSTER,
40×60インチ(約1015×1525o)やBRITISH 3SHEET 6SHEETなどがありま
す。
フランス
ハリウッドとはひと味違う世界観が多くのファンを獲得しています。またフランスは映画の輸入大国でもあるため、海外映画のフランス版が多数存在します。
本国とは全く違うアートワークで、タイトルもフランス独自のものが採用される場合もあり、思わぬ一品・珍品と出会う楽しみもあるのです。現在ではPETITEと呼ばれるSMALL FRENCH/スモール・フレンチ、15〜18×21〜24インチ(約380〜450×530〜610o)とGRANDEと呼ばれるLARGE FRENCH/ラージ・フレンチ、47×63インチ(約1200×1600o)の2タイプのポスターが主流になっています。
その他の種類としてAFFICHEの通称のFRENCH ONE SHEET,23×32インチ
(約585×815o)や、主に80年代から90年の初めまでメジャータイトルのみ作られたPANTALONなどがあります。フランス版のポスターはサイズの大小にかかわらず折られて保管されていることがほとんどです。
イタリア
古くはイラストを主としたその秀逸なアートワークが、昨今では映画自体の素晴らしさから本国版をとの希望が、イタリア版の需要は途絶えません。日本では一般にその大きさが収集に敬遠されがちですが、ヨーロッパでは依然高い人気を博しています。種類は以下のようなものがあります。
FOGLIO,(約710×990o),2FOGLI/2SHEET(約1000×1400o),
4FOGLI/4SHEET(約1400×1980o)。2SHEETと4SHEETは折れています。
4SHEETに関しては通常2枚1組で、あわせてひとつのデザインとなる仕様になっています。他に細身のLOCANDINA(約330×715o)やセットで作られるPHOTOBUSTAなどがあります。PHOTOBUSTAのサイズは1950年後期まで約480×685o、その後変更されて約355×510oになりました。セット枚数は8,10,12,16,などがあるようです。
用語説明
映画のオリジナルポスターについて語る際、また当店のホームページで商品を紹介する際に用いることのある「オリジナルポスター関連用語」をいくつか下記に記しておきます。
US ONE SHEET ユーエス・ワンシート
US(アメリカ)版。
UK−QUAD ユーケー・クワッド
UK(イギリス)版の横型ポスター。
UK ONE SHEET ユーケーワンシート
UK(イギリス)版の縦型ポスター。
INTERNATIONAL/(INTERNATIONAL ONE SHEETと表記)
インターナショナル版
フランス版
フランスで印刷されたポスターです。
イタリア版
イタリアで印刷されたポスターです。
ドイツ版
ドイツで印刷されたポスターです。
FOLDED
折れているポスターです。
ROLLED
ロール状態のポスターです。
ADVANCE/TEASER(ADVと表記)アドバンスポスター
映画製作の初期段階でリリースされるポスターです。映画公開以前の宣伝に使用されます。公開よりだいぶ前に作るため、全くクレジットを含まないものや、「COMING SOON」「IN THEATERS THIS SUMMER」など大まかな情報のみのものがほとんどです。中にはキャラクター別として数種類リリースされたり、映画の内容を小出しにして1タイトルで数種類が制作されるものもあります。
REGULAR/FINAL(REGと表記)レギュラーポスター
映画公開直前から公開中の宣伝に使用されます。具体的な公開日時や製作スタッフ、キャスト他様々なクレジットが入っています。大抵はアドバンスと違うデザインでリリースされますが、近年アドバンスにクレジットが付いただけのものもあります。
DOUBLE SIDE/(DSと表記) ダブルサイド 両面印刷
現在はほとんどのUSワンシート、ブリティッシュクワッドにこの両面印刷の技法が使われています。表面は通常の柄、裏面はそれを裏返しにと、
紙の両面にアートワークが印刷されています。表裏でわずかな陰影の違いがある場合があります。
イギリスのポスターに関しては裏面が青みがかったものもみられます。元々は劇場のライトボックスに入れて使用するために作られたもので、ディスプレーボックスの後方からライトをあてることでよりポスターの美しさが引き立ちます。近年高品質のリプリントポスターが出回りつつありますが、現時点ではまだ両面のリプリントはわずかです。コレクターの中にはリプリントを避けるためにも、近年ものはDSしか集めないという風潮が世界的にあるようです。
表 裏
SINGLE SIDE/(SSと表記) シングルサイド 片面印刷
表面のみ柄が印刷されていて裏面は白い紙のままです。両面印刷の技術が使われるようになる以前のポスターは全てシングルサイドです。近年ものであっても片面印刷のものしか作られない作品もあります。また、1タイトルでシングルとダブルの両タイプがリリースされる場合もあります。
GLOSSY/グロッシー
表面にコーティングがしてあります、全ての作品にはこの加工はしていませんが、ソニー系列の作品に多く見られます。
AWARD/(AAと表記)アワード版
ポスターのどこかに、その映画が映画祭や何かの賞にノミネートされた、または受賞したとの記載があるものです。オスカー像やカンヌのレリーフとともに受賞年度やコメントが書かれていることもあります。既存のアドバンスやレギュラーと同じデザインのもの、新しいアートワークで作られるもの、様々です。
REIVEW/レビュー版
作品が世間やプレスから特に高い評価を得た場合、その評価のコメントなどを載せたポスターがリリースされる事があります。一般公開前の映画際などで高評価をえたりすると、通常のレギュラー版と同時期にレビュー版としてリリースされたりします。
PREMIERES/プレミア上映版
一般公開に先立って特別なシアターやごく限られた劇場だけでプレミア上映をおこなう場合があります。時々スタジオはそのためのポスターをリリースすることがあります。それがプレミア上映版です。過去にスターウォーズがプレミア上映されたときも4つの劇場用にそれぞれ2つのポスターが作られました。それらは現在極端にレア(珍しい)なポスターとなり、市場での価値も高騰しています。
COMBO/コンボポスター
複数の映画(多くの場合は2つ)を一度に紹介するために作られたポスターの名称です。一般にB級映画が多くドライブインシアターで使われたりしています。
LENTICULAR/レンチキューラーポスター
3Dやホログラム効果のポスターです。厚紙やプラスティック素材がベースとして使用されています。通常12の異なったイメージを取り込み組み合わせるプロセスで特殊な層を生み出します。製造コストも高く制作枚数も少ないため、流通価格も高くなっています。
MYLAR/マイラーポスター
マイラープラスティックというシートに印刷されたものです。このプラスティックはシルバー、またはゴールドでコーティングされています。その上からとてもカラフルな色彩が着色可能で、見た目にもとても魅力的な仕上がりです。製造コストのかかるポスターで印刷枚数も少ないため、通常のワンシートと比べると流通価格も高くなっています。
STYLE/スタイル
メジャーフィルムになると、通常1柄ずつのアドバンスやレギュラーポスターが2種類以上リリースされることがあります。その際にポスターを区別するためにリリース順にスタイルA,B,,,,と呼んでいます。通常それぞれ独自のデザインになっていて、1つはその映画のロマンティックな面を強調し、もうひとつはアクション的な部分を前面に出すなど総合的な宣伝効果を考えて制作されていることが多いです。
RENAME/リネーム
稀に映画のタイトルを初回とは別のタイトルで公開することがあります。
その際リリースされるポスターには変更前と後の2つの題名が入っていたりaka(as Known as/またの名は、としてしられる)が付いていたりします。
このakaは外国映画を公開する時にタイトル変更した場合にもよく使用されます。
CONDITION/コンディション
ポスターの品質、状態のことです。海外ではコンディションのいい順にMINT/ミント、NEAR MINT/ニアミント、EXCELLENT/エクセレント、
VERY FINE/ベリーファイン、FINE/ファイン、VERY GOOD/ベリーグット、GOOD/グット、FAIR/フェアー、POOR/プアーなどと表記されています。
但しこの表現は売り手によってまちまちです。このコンディション表記はポスター購入を決断する際の一定の基準になります。しかしながら、分類が売り手の主観に基ずいているため、実際のポスターが自分の想像した状態と一致するとは限りません。特に古い年代のポスターの場合、「経過年数を考慮してのミント」などという場合もあり、やはり実際目で見てみないと正確なところはわかりません。
ロビーカード
こちらも配給会社が用意する宣伝材料で映画館のロビーに貼る為に作られるものです。映画の中のシーンがスチール形式で、複数枚1セットとなっています。80年代までは多くの作品で作られていましたが、近年アメリカではロビーカードは製作しない傾向が強まっているようです。その為流通数が極端に少なくなりました。スペイン・フランス・ドイツなどのヨーロッパでは現在でも作られています。
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